私が博士を中退して就活した時の記録
私は博士課程の研究成果が出ずに年齢を重ねた結果、博士中退して就職をしました。
その際に行ったことを本記事にまとめておきますので、似たような状況の方への参考となれば幸いです。
博士課程中退までの経緯
私は研究者への進路を目指して理工系の修士・博士と進んでいましたが、博士論文を満たす研究成果を積み重ねることができませんでした。
研究室は放任寄りで学生間の連携もなく、各自で関連性の薄いテーマを進めているため、ドツボにはまった際には自力でどうにかするしかない研究室でした。
結局博士課程にいる間に第一著者で通せた論文は2本で、他は成果にならずに論文にもできないネタを量産した結果になりました。
在籍していた博士課程では上限が6年間で自身の年齢も30に近くなってきたこともあり、これ以上博士課程にいてもアカデミア分野で研究者としてのキャリアを望むことは不可能に近いと判断しました。
後から考えると、ドツボにはまっていた時にきっぱり中退して就職するか、他大学・他研究室への移籍などを行っておくべきだったとは思います。
とはいえ相談相手も碌におらず、アカデミアへの未練を引きずり決断が遅くなってしまいました。
そしてここから就活となると、博士中退者で碌な研究業績がない人間では、通常の学部生・院生と同じような就活をやっては相当厳しいだろうと思われました。
なので、いくつかの手段を並行して就活を行いましたので、それぞれについて記録をしておきたいと思います。
就活の方針
客観的に当時の私を分析してみると、博士中退者で年齢を重ねている割には研究実績が乏しく、よほどのことがなければ企業は修士新卒者を選ぶだろうと思えました。
なので、応募は数を打つ必要があると思えましたし、自身で調べた企業に限らず、就職エージェントなどが持っているような中小企業中心の求人を含めて広く応募するべきだと思いました。
また、エントリーする企業についても自身の研究分野に限定せず、専門外を含めて広く応募する必要も感じてました。
唯一の強みになりそうだったのが、研究とは別に 趣味でプログラミング をしていたことです。
こちらは自分用に作ったツールや、公開してたGUIツールなどがありましたので、こちらをESや面談時に添えることで失敗した研究業績以外に強みがあることをアピールしていました。
結果的にはこれが功を奏し、DXをしたいが情報系人材が少ない業界の企業に「専門ではなくてもプログラム書けるなら情報人材枠だろう」と判断されて採用されました。
就活時のメンタル
博士中退ということで、基本的にESや面接の通過率が低いことは覚悟しておいたほうがよいでしょう。
人間、誰しも断られ続ければメンタルに来ますが、事前に通過率が低いことを覚悟しておけば多少ダメージは抑えられます。
メンタルの保ち方としてはJia Jiangという方の拒絶される恐怖を克服するための100日計画の内容が参考になるかと思います。
内容としては彼のTED動画にもありますが、基本は人は断られることに恐怖を覚えるのが当たり前というものです。
さらに、「拒絶が怖いのは当たり前」「拒絶されたら小さなお願いをするとダメージの軽減ができる」などといったことが紹介されています。
この書籍に限らずこういったメンタルを維持するための知識などを持っておくと、就活に臨みやすいかと思います。
利用した就活の手段
私が就活を行う際に利用した手段は以下になります。
- 直接応募(就活サイト含む)
- オファー(逆求人)型就活の利用
- 就職エージェントの利用
最終的には就職エージェントから紹介された企業に就職しましたが、オファー型就活はともかくとして直接応募と就職エージェントは併用するべきだと感じました。
オファー型求人については現状もっと求人が増えているのかもしれませんが、当時は私にまでオファーを出すような企業が皆無であり、残念ながらエントリーにすらつなげることはできませんでした。
3つの手段それぞれについて記述します。
直接応募(就活サイト含む)
企業へ直接ないしはリクナビなどの就活サイトを介してエントリーシートを出す一般的なルートですね。
私が当時登録していたのは以下の3社ですが、結局面接まで進めたのは2-3社で大体がESで落ちました。
リクナビ、マイナビという大手2社に加えて、研究開発系に強みがあるアカリクを使いました。
アカリクに求人を出す企業であれば博士中退者でも研究開発系で採用してくれないかなという仄かな希望もありました。
実際、数は少なかったですが技術系ベンチャーでCEOもしくはCTOが博士取得者だったりする場合、博士号への研究業績の大変さに理解をしてくれる場合もありました。
その中のさらに一部のベンチャーであれば、募集要項に修士卒・博士卒に加えて博士中退・ポスドクの2つの初任給が記載されているような企業もあり、こういった企業であればほかの企業よりはESが通る確率も少し高くなるのかなと思います。
また、自分の知る業界以外でも興味を持てる業界がないか「会社四季報」業界地図などで事前に調査をしておくのもよいと思います。
オファー(逆求人)型就活の利用
当時はOfferBox Ph.D.(現在はOfferBoxに統合)に登録しましたが、結果としてオファーは0件でした。
これはまだ企業の利用者が少なかったこと、企業側は博士取得者が欲しいのであって中退者が欲しいわけではないこと、私の研究業績がなく他の強みも少なかったことなど悪い条件が重なったことが原因かと思います。
利用される方の研究分野、業績、その他の強み次第では上手く活かせるのかもしれません。
就職エージェントの利用
結果として本命になった就職エージェントです。
基本的には中途の転職エージェントが、実績を広げるために新卒者にもサービスを提供しているものになります。
転職エージェントと就職エージェントでは大きな違いもなく、エージェント登録後に担当者と面談をして、求人を紹介して貰って応募してく流れです。
エージェントにESの添削、面接の練習、面接時の企業側の反応フィードバックなどをやってもらえることもあり、うまく活用することをお勧めします。
ESはもちろん自力である程度整えたうえでの利用となりますが、逆にエージェント協力の下で改善したESや面接内容を1.の直接応募に持っていくこともできるわけですから。
直接応募と就職エージェントを両方利用することは、相互に補い合ってくれるので就活生にはプラスです。
就職エージェントの求人では自身で広報力が少ない中小・ベンチャー企業や大企業の子会社が中心であり、直接応募だとどうしても知名度・広報力のある企業に応募することになりますから。
ただ、就職エージェントは無料で利用できる一方、その利益を採用企業からの紹介料としてもらっているので、エージェントとのやりとりでは直接応募の企業に傾きすぎていることを匂わせるべきではありません。
あくまでエージェントと直接応募を並行した結果、最終的にどちらを選ぶかわからないというスタンスで臨むべきでしょう。
私も直接応募・エージェント紹介の企業はどちらもES・面接など全力で取り組みましたし、結果としてエージェント紹介の企業に入ることにはなりましたが、最終的には直接応募・エージェント紹介の双方企業で内定を得て散々迷いました。
前置きが長くなりましたが、以下が利用した就職エージェントです。
私が博士中退ということもあり、紹介してくれる求人にエージェントごとに大きな差はありました。
中でも理系就活チャージはメイテックネクストが運営する就職エージェントですが、こちらは紹介求人がかなり多くてよかったです。
理系就活チャージでは担当のEさんがしっかり面談をしてくれた上で、私の専門分野・プログラム趣味に合わせた求人を5-6件紹介してくれて、最終的にこちらの紹介の会社へ就職することになりました。
おそらく中途向けのメイテックネクストでエンジニア向けの求人が多くあるため、同じ企業から新卒向けの求人を取ってきやすいのではないかと思います。
ES・面接対策
ES
ESは基本的に何回も練り直して、字数の限界まで文章を全部埋めることは大前提です。
自分本位の情報や嘘は排して、企業目線で望ましい情報が何かということを考えて文章を練ります。
さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0など、自己分析系のツールを使って自身の強み・弱みを整理するのもよいでしょう。
面接
面接は事前準備がすべてかと思います。
ESに書いた内容や志望動機などは企業ごとにまとめて迷わず答えられるようにしておきたいところです。
私がやっていたのは、共通となる自己紹介・志望動機スライドを作っておいて発表練習をすることです。
そしてそれをベースに企業ごとに志望動機や質問内容などを修正したスライドを作成し、面接前に練習します。
練習をしておけば当日口頭でもある程度受け答えはできますし、自身の強みのアピールで食いつきがよかった場合にはノートPCを取り出して画像・動画で紹介することもできます。
なので、テンプレを使いまわすことを前提に自己紹介・志望動機・自身の強み紹介(画像/動画など)をまとめたスライドを作成しておくことを推奨したいです。
私は面接時にはノートPCやタブレットをスリープ状態に忍ばせておき、即座に取り出して紹介できるようにしてました。
実際に食いつきのあった企業はそこまで多くありませんでしたが、逆に食いつきがあった企業はその後の面接も終盤まで進めた企業が多かったです。
就職後
同期となる学部卒・院卒の方々とは年齢差がありまし、先輩とも年齢が逆転していたりと年齢面のギャップはどうしてもあります。
こればかりは博士中退者である以上どうしようもありませんし、その数年分の遅れが給与にもあることは仕方ないかと思います。
ただ、私の職場は社員数がそこまで多くないこともあり、同期の数も少なくかえって浮くことはなかったように思えます。
職場の当たりはずれはあるかと思いますが、どうしても気になる・気にされるのであれば数年経験を積んでから転職するというのも手かもしれません。
いずれにせよ年齢のギャップばかり気にせず、就職の遅れをカバーできるように誰にでも質問などを行って学んでいく姿勢は必要かと思います。
最後に
私の周りでは博士中退者向け情報がほとんどなく、自身が就活をするときに大分苦労しました。
今回まとめた情報以外にも役に立つ情報が多くあると思いますが、わずかなりとも同じ境遇の方の助けになれば幸いです。
まとめ
- 私は博士研究で成果が出せず、中退して就職した
- ES・面接の通過率の低さが想定されたので応募数を多くした
- お祈りへの対策へのメンタルコントロールも対策
- 就職時には直接応募・オファー型就活・就職エージェントを利用した
- 直接応募・就活エージェントの併用はオススメ
- ES/面接対策は十分に行っておく
- 最終的に就職エージェントからの紹介のあった企業に就職できた
- 入社後にも年齢の問題はあるが仕方ないが、気にしすぎず働いていく
- 本情報が助けとなればうれしい